アキバガレージでは以前からDVD対応のデュプリケーターを販売していましたが、市場にブルーレイメディアが浸透していくにつれ、
やはりブルーレイディスク(以下、BD)にも対応したデュプリケーターを求める声は少しずつ増えていきました。
我々販売店の間でも、BD対応デュプリケーターの話がちらほらと囁かれてはいましたが、結局噂の域を出ず、実際に発売されることはついぞありませんでした。
アキバガレージはもともと、名実ともに画像安定装置の売り上げ日本一を誇る、いわば画像安定装置の専門店です。
デュプリケーターもスペシャル機能搭載、という点ではアキバガレージの十八番のはず・・・これまで画像安定装置だけではなく、デュプリケーターも長年販売してきた。
ここでやらなきゃ・・・漢じゃない!
そしてついに、世界初の『スペシャル機能搭載 BD対応デュプリケーター』の製作に乗り出したのです。
いよいよBD対応デュプリケーターを製作することになったわけですが、いくつもの課題がありました。
■まずは品質。
長くご使用いただく商品ですから、パーツには拘りました。組み込まれるパーツ全てを一から作るわけにはいかないので、そのスペックから市場評価までを徹底的に調査し、納得のいく製品を作り出します。
■次に性能。
一台、完成したサンプル機が届きました。早速レンタル店で10枚程度のBDを借り、テストをすることに。
ところがその半数以上の7枚について、「ディスクを読み込まない」「何時間経っても読込が終わらない」などの症状がでました。
いわゆる「ウラモノ」を呼ばれるデュプリケーターは、DVDの時代から「一部、非対応ディスクがある。」ことを前提に販売されています。
BDデュプリケーターにおいても当然その障害は付きまとうことを周知していても、この割合は高すぎる。
直ちに原因究明を始めました。そして、その原因はBDのバージョンによるものだったと判明。
BDのバージョン対応については後程語ることになりますが、まずいのは「ディスクを読み込まない」「何時間経っても読込が終わらない」という状態と、その割合。
この機械を使うのは、我々メーカーの人間ではなくて、一般のお客様なのだ。
バージョン云々なんて言い訳に出来るはずもなく、プログラムの改良を急ぎました。
「非対応率は1割以内」
「エラー状態が誰でも解るような仕様」
この2点は、絶対にクリアしなければいけない課題となりました。
■そして、価格。
当初の販売予定価格は、158,000円。
生産コスト、ロット数、他店への拡販を考慮すると、この価格にせざるを得ない状況でした。
前述のとおり唯一無二の商品ですし、販売の場の最前線にいればこれを必要としているお客様が多くいることを肌で実感していますから、価格ではなく価値を見てお客様は選んでくれるだろう。
158,000円は、決して高くはない。
そういう思いもありましたが、我々はメーカーであり、そしてショップでもある。
我々の思いよりも何よりも、お客様の立場になって決定しなければならないのです。
あるスタッフから飛んできた言葉が、
「10万円を切れないだろうか。商品の価値もコストもわかるけど、ケタが一つ変わると購買意欲は大きく変化する。」
無謀にも見える発言ではあるけれど、確かにそうだ。
だが、ただ単純に10万円を切る販売価格をつけてしまったら当然ながら完全に赤字となってしまう。
品質は落とさずロット数を上げることでコストを下げる。
効果の期待できる他店への拡販は諦め、自社だけで販売する。
年を越えて調整と協議は繰り返されたが、ついに98,000円という価格を実現したのです。
BDに対応するとなった場合、難しいのがバージョンアップの対応について。BDは頻繁に新しい規格が出てくるため、デュプリケーターも都度々々バージョンアップを行っていかないと、どんどん対応不可の作品が増えていってしまう。
しかし、このアップデートを頻繁に行おうとするとそれだけ様々なコストとサポートが必要となる。
各社ともBDデュプリケーターの販売をしない理由がここにありました。
ですが、そのバージョンアップの件についても技術サイドと交渉に交渉を重ね、定期的にバージョンアップを行っていくということになりました。
そして、製品1点1点に識別ナンバーを設け、すべてのお客様情報と製品の状態を管理。継続的にサポートを行っていける仕組みを作りました。
ここまでやったからこそ、アキバガレージは世界初のBDデュプリケーターを発売することができたのです。
これまでもアキバガレージでは主に画像安定装置について自社製品を世に送り出してきました。
アキバガレージ初のオリジナル画像安定装置につけられた名前は「BLADE(ブレード)」。
「BLADE」シリーズはその後も3機種が開発され、いずれも大ヒット商品となりました。
また、DVD対応デュプリケーター「BDX-8800」も発売し、わずか1年足らずで完売させるに至ります。
着実に実績を積み、お客様からの信頼、期待を得ることが出来たと自信を持てるようになりました。
そして、今回完成したBDデュプリケーターは今までの系譜に連なる集大成的製品であり、オリジナルで世界初のスペシャル機能付きBDデュプリケーターとして自信を持っておすすめしたい、
という思いから、製品名には「BLADE」の名を冠し、ブルーレイディスクの略であるBDをつけました。
シンプルだけど、これ以外に考えられない。
最終サンプルが届いたのは、2014年3月半ばを過ぎた頃。思えば、品質、性能、価格を調整している3か月などはあっという間でした。
レンタル店から借りたBDは、この時すでに100枚を超えていました。
最終サンプルを使用してのテスト結果は、見事に90%以上の成功率を達成。
エラー発生時の表記もより分かりやすいように仕様変更がされた。
スタッフ全員が、「これならいける!」と確信できる結果となりました。
この時点で大量生産の発注をし、あとは工場に任せて完成を待つのみ。
・・・メーカーとしての仕事は最終チェックをして終わりであるが、アキバガレージはそうもいかない。
いかに世界初といえど、この商品を販売するのは自社だけなのである。
ショップページに情報を掲載し、広告を打つなどの販売戦略を立てなければいけない。
その中で、最も重要なのが発売日でした。生産は始まっているし完成予定も、そうそう狂わない。
おおよそ2014年5月上旬だろうということではあるが、時は2014年3月末。
丁度、実に17年ぶりとなる消費税増税が目前に迫っていました。
消費税5%のうちに、なんとか販売が出来ないだろうか。
まだショップページに掲載する情報が全て整っていないし、そもそも、BD対応のデュプリケーターの開発が行われていること自体、お客様は知らないのだ。
だけど、「この商品は、絶対に必要とされている。」という確信が我々にはありました。
情報不足なのは承知の上で、
『世界初のスペシャル機能搭載BDデュプリケーター「BLADE-BD」 98,000円(税別)予約受付開始』
というタイトルとイメージ画像のみの奇妙な商品ページをサイト上にアップし、会員様向けにメールマガジンを送信した。
その翌日、鳴り止まない問い合わせと予約の電話、サイトでの注文に、
・・・震えた。
期待に胸を弾ませるお客様の声と、感謝の言葉。
この瞬間がまさに、商品の価格以上の付加価値をもらった瞬間だった。
結果、3月最後のたった一週間で生産数の3分の1を超える予約が入り、発売当日の夜にはもう半数以上が倉庫からなくなりました。
2014年6月現在、発売から一カ月足らずであるが、我々の目論見は見事に外れ追加生産をする日も遠くないでしょう。
だが、まだまだ認知度は低いのです。「ウラモノ」と呼ばれる商品が世の中の表舞台に登場して脚光を浴びることはないだろうと思います。
いいものを作ったというメーカーとしての自負。
いいものを売っているというショップとしての自信。
これらをもって、アキバガレージはこれからも進んでいくのです。